食物アレルギーで一番大変なのは食事のこと。リスク回避の観点から、食物アレルギーに配慮した調理のコツ、食事の際の注意点などをご紹介します。
国立研究開発法人
国立成育医療研究センター
大矢 幸弘先生 監修
調理や食事のポイント
一番大切なことはアレルギー専門医・指導医による正しい原因アレルゲン診断に基づいた必要最小限の除去を行うことです。食品は除去するアレルゲンの種類とその量、調理方法、加工品は使用可能であるかについて正確に把握しましょう。思い込みによる過剰な除去は成長期の大切な栄養の摂取が妨げられてしまいますので、必ず、アレルギー専門医・指導医の診断結果に従いましょう。
食物を食べてすぐに症状が現れる場合は原因食物が特定できることが多いです。原因食物の除去する数が少なく、使用できる量や調理方法、加工品の選択が正しく把握できていれば、除去食が慣れてくるに伴い、食事日誌をつけなくなる例もみられます。しかし、原因食物が特定できない場合には食事記録により原因食物を特定する努力をします。
平成14年4月より、食物アレルギーの発症頻度が多いか重篤な症状を誘発しやすい食物(特定原材料)に対して、微量でも含有している場合は、原材料表示されるようになりました。ただし表示の対象は容器包装された加工品のみで、店頭販売品のお惣菜、ファーストフードなどは対象外となっています。
この表示を見ることで食べても大丈夫な加工食品を選べることになります。この表示の目的は、危篤な食物アレルギー症状が起きるのを避けることにあります。これにより表示を見ることで、食べても大丈夫な加工食品をある程度選ぶことができます。平成20年9月よりカシューナッツ、ごまが推奨表示に追加されました。
加工食品のアレルギー表示
特定原材料等の名称 | ||
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義務 | 卵、乳、小麦、落花生、えび、そば、かに、くるみ | |
奨励 | いくら、キウイフルーツ、大豆、バナナ、やまいも、カシューナッツ、もも、ごま、さば、さけ、いか、鶏肉、りんご、マカダミアナッツ、あわび、オレンジ、牛肉、ゼラチン、豚肉 |
アレルギーのある方の食器をひとまとめにして洗剤を入れた溶液で十分に浸漬しましょう。浸漬後、スポンジ等を用いて洗浄しますが、コップ、フォーク、箸などは洗いにくくアレルゲンになるたんぱく質が残存する可能性があるので十分に洗浄しましょう。食器洗浄機を使用する場合も十分に浸漬、洗浄後に洗浄機に入れるようにします。洗浄に用いるスポンジもアレルギー専用とし、定期的に交換しましょう。
アレルゲンになる食品の混入を避けるため、先に食物アレルギーの方の食事を調理します。見た目が家族と同じ料理に近づけるために、食物アレルギーの方のものは、アレルゲンになる食品を加える前の調理途中から分けるようにしましょう。鍋物、おでんなども先に食物アレルギーの方をとりわけてからアレルゲンになる食品(卵など)を入れましょう。
食物中に自然に含まれている化学物質がアレルギー類似症状(かゆみ、じんましんなど)を起こすものです。仮性アレルゲンは水にさらしたり、茹でたりしてアク抜きしてから加熱調理することで減らすことができます。強い症状が長く出る時には、アレルギー専門医・指導医に受診し、本当のアレルギー反応がどうか診察してもらいましょう。
よく食物アレルギーによる症状が出てしまうのは、旅行や帰省、友人宅にお呼ばれされる時です。食事やおやつは楽しみの1つになっています。しかし、食物アレルギーのため、食物除去があることについて勇気を出して伝え理解を深めることが大切です。旅行の宿泊先で食物アレルギーについて代替食品を用いた料理を提供している場合、窓口の担当者を決めて各料理の材料や調味料を文書でやりとりし、記録を残し詳細を確認してみましょう。
平成14年4月より、食物アレルギーをおこしやすい物質を加工食品に表示することになりました。必ず表示される8品目(特定原材料)が普及してきたものの、表示から十分な表示が把握できないこともありました。複合調味料は原材料表をみただけでは、含有食材がわからない製品も多く存在しています。香辛料や調味料は使い慣れた製品を使用するほうが安全です。原材料に疑問や不安がある場合は、製造メーカーに問い合わせして、納得のいく情報をえることができた場合に使用するようにしましょう。
※くるみの表示が義務化となる2025年4月までは経過措置期間となるため、表示が切り替わっていない商品もございます。
日頃食事を用意しているご家族の方が調理・準備をして配膳するときは、慣れているかもしれませんが、普段一緒に暮らしていない祖父母の方などが配膳を手伝ってくれるときも、間違いのないように注意が必要です。たとえば、食器やトレーの色を分けたり、付箋で食器やトレーにアレルギーの子の名前を書いておくなども、見てわかりやすい対策です。
アレルギーのある子の席をあらかじめ固定して決まった席に配膳する、などの工夫も配膳する人がわかりやすい方法の1つ。小さなことかもしれませんが、ご家庭でもできることから、工夫して取り入れてみましょう。
ご家族の方の食材の手配や、冷蔵庫に揃える食材などの確認は、お医者さんに相談しながら、ご家族みなさんで一緒の食卓を楽しんでください。
離乳食の注意点
アレルギー児だからといって、離乳食の開始を遅らせることは推奨されていません。一般の乳児と同じく、5~6ヵ月頃が離乳開始時期ですが、最新の研究では、もっと早いほうがよいことを示しているものもあるくらいです。
湿疹やアトピー性皮膚炎など皮膚の炎症があると食物アレルギーになりやすいことがわかってきました。湿疹をなるべく早めに治療し皮膚状態をきれいにして離乳食を始めるのがよいでしょう。湿疹の強い場合は、離乳食前にアレルゲン検査や負荷試験を行うなどアレルギー専門医・指導医の指導のもとで離乳食を開始したほうがよいこともあります。
最近の離乳食の進めかたについては、ふつうのお子さんで行われている支援ガイドと同様に、米粥、野菜、白身魚、大豆食品を利用してゆきます。普通ミルクが飲める場合は、乳製品も利用を進めます。すでにアレルゲン食品が明らかになっている場合は、代わりのアレルギーのない食材を利用します。
(厚生労働省ホームページ/PDF 0.6MB)
(PDFファイル:0.6MB)
食品購入時の注意点
アレルゲン表示の対象は加工食品です
あらかじめ箱や袋で包装されていたり、缶やビンに詰められている加工食品には、原材料として使用した特定原材料を表示する事が食品表示法で定められています。義務表示と推奨表示があります
特定原材料8品目表示義務卵
乳
小麦
そば
落花生
(ピーナッツ)
えび
かに
くるみ
アーモンド
あわび
いか
いくら
オレンジ
カシューナッツ
キウイフルーツ
牛肉
ごま
さけ
さば
大豆
鶏肉
バナナ
豚肉
マカダミアナッツ
桃
やまいも
りんご
ゼラチン
食物アレルギーの頻度が高いまたは重い症状が出やすい8品目(特定原材料)を使用した場合は、微量であっても表示をしなくてはなりません。
一方、義務ではないが、表示が推奨されている20品目(特定原材料に準ずるもの)もあります。
この推奨表示は、使用されていても表示されない場合があるので、注意が必要です。
詳しく知りたいときは、直接メーカーに問い合わせましょう。
アレルギー表示対象品目名が別の名称で表示されることもあります。
異なった表記でも特定原材料と同一であることが理解できる場合には、別の名称で表記することが認められています。
代替表記: 表記方法や言葉が違うが、特定材料と同一であるということが理解できる表記 |
拡大表記: 特定原材料または代替表記を含んでいるため、これらを用いた食品であると理解できる表記例 |
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卵 | 玉子、たまご、タマゴ、エッグ、鶏卵、あひる卵、うずら卵 | 厚焼玉子、ハムエッグ |
乳 | ミルク、バター、バターオイル、チーズ、アイスクリーム | アイスミルク、ガーリックバター、プロセスチーズ、乳糖、乳たんぱく、生乳、牛乳、濃縮乳、加糖れん乳、調製粉乳 |
小麦 | こむぎ、コムギ | 小麦粉、こむぎ胚芽 |
えび | 海老、エビ | えび天ぷら、サクラエビ |
かに | 蟹、カニ | 上海かに、カニシューマイ、マツバガニ |
そば | ソバ | そばがき、そば粉 |
落花生 | ピーナッツ | ピーナッツバター、ピーナッツクリーム |
くるみ | クルミ | くるみパン、くるみケーキ |
出典:独立行政法人 環境再生保全機構「食品アレルギーの子どものためのレシピ集」
注意喚起表示
製造ラインでのコンタミネーション(混入)の可能性について、「○○を含む製品と同じラインで製造しています」という注意喚起表示が認められています。(義務表示ではありません)
この表示は、原材料表示の枠外に記載されています。
ただし、「○○が入っているかもしれません」という可能性表示は認められていません。
詳しく知りたい場合は、直接メーカーへ問い合わせましょう。
外食・中食では、アレルゲン表示が免除されています
加工食品には表示義務がある一方、飲食店(ファストフード、レストランなど)や店頭で調理されている弁当、パンなどには表示義務がありません。
また、表示がされている場合でも厳密なアレルゲン管理がされていないまま表示されている場合があります。
少量の混入でも症状を起こす場合には、注意が必要です。不安な場合には、アレルギー専門医・指導医に相談・確認をしましょう。
※「食物アレルギーの原因食品とアレルゲン表示」の項目をご覧ください。
外食・イベント・旅行時の注意点
まずは事前にお店にアレルギー対応が可能か確認しましょう。WEBサイトで食物アレルギー対応を謳っていたとしても、直接電話をして確認をするほうが安心です。確認ポイントは下記をご参照ください。
旅行の際には、宿泊施設に食物アレルギーについて事前に伝え、下記の内容を確認しておきましょう。確認ポイントは外食時の注意点と同様です。宿泊施設に到着後、フロントと施設内の飲食店、両者へ食物アレルギーについて再度説明をすると安心です。
【確認ポイント】
大勢が集まるイベントの場合は、主催者や他の参加者に事前に食物アレルギーについて伝えておきましょう。アレルゲン食材、食べられない食品(加工品など)を具体的に伝えることが必要です。その上で下記のような対応もご検討ください。
祖父母などに預ける際の注意点
まずは食べさせてはいけない食材、食品をはっきりと伝えることが大切です。ただし、卵、乳、小麦等、多くの食品に含まれているものは意図せず食べさせてしまう可能性もあります。下記の具体的な対策をとりながら、預ける方にも食物アレルギーに対しての知識を徐々に深めてもらえるようにしましょう。
出典(参考資料)
大矢 幸弘先生
国立成育医療研究センター アレルギーセンター シニアフェロー
名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学分野特任教授
藤田医科大学ばんたね病院総合アレルギー科客員教授
食物アレルギー初心者向け、まず押さえておきたい基礎情報